屋久島は一年に「366日」雨が降るといわれているほどの島で、撮影に出かけた四日間は当然のごとく雨また雨の連続でありました。しかしそれこそが屋久島の屋久島たるよさであって、しっとりと濡れた急峻な山道を歩いていくにつれて森も霧も深くなり、その中に溶けて吸い込まれていくような気分を何度も味わった。
この屋久島には撮影機材として、たった2台のカメラしか持っていかなかった。一台は単焦点の200万画素カメラであるエプソンのCP-800。もう一台は35㎜のフィルムカメラでEF28~135㎜F4~5.6 IS レンズを付けっぱなしにしたキヤノンEOS 55、そして小さな三脚が1本のみという身軽なスタイルであった。デジタルカメラとフィルムカメラの“使い分け”などはまったく考えずに、出会った風景を見たときにたまたま手にしていたほうのカメラで撮影をする、といういたって単純なことをしていた。雄大な自然の風景の中では「アナログカメラかデジタルカメラ」なんでどうでもよいことで、とにかく気分良く写真が写せてそれで充分に楽しめた。
ここで見てもらおうと並べた写真は縦横比がまちまちのものがいっぱいある。それはトリミングしために縦横比がばらばらになったのではなく、デジタルカメラで撮影した画像を「つなぎ写真」にしているからだ。目の前に広がる苔生した深い森をワンカットで写そうとするにはとても無理のある“広さ”だったわけで、そこでその風景を縦方向や横方向に分割して撮り分けておき、事後ソフト的に合成(ステッチング)処理をして一枚の写真に仕上げることにした。縦横比が変則的なことになったのはそのためだ。
屋久島からの帰路、対岸にある種子島に寄った。その海岸から屋久島を遠望すると、ぼくたちがいたときと同じように山並みは深い雲に覆われていて容易にその全貌を見せてはくれなかった。